[REPORT]札幌sound lab moleにて3日間に渡り行われたライブイベント「DOSANCO JAM」をレポート。

2019年9月6日、地下鉄の改札を抜けてポールタウンを早足で進む。サーティーワンを横目に逆方向のエスカレーターを駆け上がれば、週末、狸小路の喧騒。わたしの前のめりな気持ちを阻むように赤く光った信号に立ち止まり、ふと上を向けば、何度も見たフライヤーと同じ景色がそこにあった。

圧倒的濃度で密度の三日間が、幕を開ける。

DOSANCO JAM、それは “Mash Apple Recordのくぼたしょーが北海道の音楽シーンを「わっさ!」と盛り上げるべく立ち上げた音楽イベント。北海道との『ゆかり』を、そして北海道を音楽で心から楽しんでもらいたいという心意気から始まったイベントである” (以下記事より参照)

主催のくぼたしょー曰く、ブッキングの基準は「強くて優しい音楽」「圧倒的ドラゴン感」そのふたつ。出演者の半数以上を占める北海道アーティストに関しては、しっかり主催本人がライブを生で見た上で妥協なくオファーを出している。

2016年7月に第一回が開催されて以来、音楽好きが唸る尖ったブッキングで北海道をざわつかせ続けているDOSANCO JAM。六回目の開催となった今回は9月6,7,8日の三日間で行われ、出演アーティストはオープニングアクト含め総勢26組。会場はいつものSound Lab mole。各日異なるフード出店が行われていたり、全日分のタイムテーブルのデザインをぼく脳(二日目のオープニングアクトも務めた)がしていたり、ライブ以外の注目点も多いのは「音楽以外のエンターテイメント要素を加え、全方面から見て”面白い”を実現させる」という主催の志によるもの。

今年のDOSANCO JAMが背負った使命は、上に挙げたことだけではない。ここで、なぜ今回のDOSANCO JAMは三日間の開催なのかということに触れたい。

昨年9月8日、第四回目のDOSANCO JAMが開催予定だった。当日が目前に迫った2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生、当イベントは中止を余儀なくされてしまう。その無念や悔しさ、悲しみを愛で三倍返し、それが、今回のDOSANCO JAMなのである。当時のチケットを払い戻さずに持っている人はそのチケットで三日間入場可能、また道外からの来場者は入場無料。あの日からちょうど一年が経ったタイミングでそれぞれ現場に足を運び、“今”を目撃し、北海道の音楽シーン、そして北海道は元気だと顔を合わせて再確認すること。それを道外の人にも肌で感じてもらうこと。これから先の北海道に皆でわくわくすること。そんな意味も抱えて開催された今回。主催はもちろん、スタッフも、演者も、お客さんも、気合の入り方が違うことが開催前からビリビリ伝わってきていた。

一日目。出演アーティストはSULLIVAN’s FUN CLUB、BANGLANG、2、中華一番、SAMURAIMANZ GROOVE、SADFRANK、そして出演者からなるセッション企画 Friday Night Jam Session。FOODはえぞまつの麻婆豆腐丼(すごくおいしい)。

この日の出演アーティストについて、主催は「やっぱりグルーヴが大事。そして、どのアーティストもフロントマンが『何かを成し遂げてやる』という目をしている」というコメントを残している。それぞれ10代後半〜20歳のメンバーからなり、若さゆえの爆発を見せたSULLIVAN’s FUN CLUBとBANGLANGでイベントが幕を開け、北海道出身のメンバーのみからなる一夜限りのスーパーセッションFriday Night Jam Session、NOT WONK加藤修平のソロプロジェクトSADFRANK、昨年のDOSANCO JAMに出演予定だった2、グルーヴの鬼SAMURAIMANZ GROOVEと続いてゆき、会場に心地よい興奮と一体感が生まれたところで、それを全て破壊する、一日目トリの中華一番。狸小路が産みし史上最凶のヒップホップクルーが創り出す地獄。DOSANCO JAMでしか起こり得ない、“最低”のキワキワを行く最高の空間がそこにはあった。初日の締めが中華一番で成り立つイベントは全世界でDOSANCO JAMだけである。

個人的には、実母と、家族と同じくらい愛しい友人と一緒に2の「family」を聞けたことがひたすらあたたかかった。ありがとう主催。

二日目。出演はThe Cynical Store、CARTHIEFSCHOOL、No Buses、g.a.g、the hatch、DON KARNAGE、zo-sun park、尾崎リノ、O.A ぼく脳。フードはDJ ひよこ食堂from壱富士のラーメン(すごくおいしい。母は三回くらい食べていた)。

この日のテーマは「カオス。混沌。アングラ」。三日間の中で一番コンセプトの強い一日である。O.Aのぼく脳が《ヒューマンルンバ》となりフロアとステージを清掃したのち、多幸感の塊zo-sun parkでライブがスタート、フロアを混沌の渦に叩き落すCARTHIEFSCHOOL、ケルベロスが如きDON KARNAGEと続き、全てを浄化する尾崎リノ、”面白い”の概念を濃縮還元したようなカリスマ集団g.a.g、時に心地よく時に妖しく観客を踊らせるThe Cynical Store、東京からの刺客No Buses、そして、二日目のラスボスthe hatchがその場にいる全ての人間の情緒を喰らい尽くし、9月7日のmoleは主催の狙い通りもしくは想定以上にカオス極まりし空間と化したのだった。

この二日目を漢字一文字で表すなら“塊”である。演者、来場者、スタッフ、共鳴するところも相反するところも全てまとめて一つの混沌とした塊となり、蠢き続ける、そんな日。出演者同士の繋がりやリスペクトが一番よく見える日であったこともその印象を強めている。the hatchのメンバーをはじめとした出演者で最前列が埋まっていたCARTHIEFSCHOOLが特に印象的で、この日がyoji(Vo,Key)脱退前のラストライブであったThe Cynical Storeに捧げた新曲や、「次はDON KARNAGE、絶対全員見てください」と呟いてからステージを去った姿を思い出すと、あの日の感情の蠢きに一瞬で連れ戻されそうになってしまう。

(今年6月にPROVOで行われた第五回DOSANCO JAMの様子)

ついに迎えた三日目。初日は他人だったあの子も、同じライブハウスで三日続けて顔を合わせればもうマブ。そんな感覚になる最終日。出演はTHE FULL TEENZ、THE BOYS&GIRLS、-KARMA-、みなみ、NOT WONK、ズーカラデル、YOU SAID SOMETHING、SEVENTEEN AGAiN、over head kick girl、O.A 藤田侑希(Favorites)。フードはカレーの国のスープカレー(すごくおいしい。全日胃が幸せ)。

「音楽でひとつの大きな山を作ったような感じ」。DOSANCO JAM開催前、主催からこの日のラインナップについてそう聞いたとき、わたしは正直ぴんと来なかった。豪華で、眩しくて、最終日に相応しい出演者たちであることは間違いないけれど、“山”というワードが掴みきれずにいた。そんな中、迎えた当日。どうしても動かせない別の予定があり、なんとか間に合ったover head kick girlのフロアに飛び込んだ瞬間、いつかの言葉の意味が一瞬で分かった。混み合ったフロアに充満する暑く熱い空気と興奮は、今この瞬間の爆発だけで出来たものではなくて、これまでに出演した全てのアーティストたちが、全ての観客が一緒に作り上げ途切れることなく繋げてきた熱狂によるものだった。確実に、その場にいる全ての人が同じ景色を見ていた。

私たちはこの三日間、ずっとDOSANCO JAMというひとつの大きな山を登っていたのだと知る。同時にその山頂がどんどん近づいていることを明確に感じる。天辺はもう程近い。残り3バンド、THE BOYS&GIRLSのボーカル・ワタナベシンゴのTシャツには「あの日歌いたかったメロディー」の文字。またハッとする。この登山が始まったのは、三日前ではなくて一年前だということに気がつく。あの日から、この場にいる全ての人がそれぞれの形で歩を進めてきた。生きてきた。そうして、2019年9月6日、それぞれが同じ山の麓に辿り着いた。人の数だけ暮らしがあって、結局他人は他人で、それぞれ好きに過ごしているけれど、同じ場所から見える景色は全員一緒で、目指している場所も全員一緒で、三日間、私たちはSound Lab moleに足を運んだ。グルーヴの波に揺られたり、蠢く塊になったりしながら進んできたこの旅も、もうすぐ終わる。

NOT WONKがステージに立ち、音を鳴らす。疑いようもなく、私たちは山頂にいた。どこまでも突き抜けていく。袖から誰かが飛び出した。フロアにダイブしたのは主催、くぼたしょーだった。それを支えようと彼の周りに集まる人の波。道産子の主催者、道産子のバンド、道産子の観客、全員で巻き起こすジャム。これが、DOSANCO JAM。
しかし、頂上に辿り着いただけでは終われない。私たちはきちんと山を下り、それぞれの生活に戻っていかなければならない。昂った心を穏やかに包み、いつもの街まで導いてくれるのがズーカラデルだった。365日前のDOSANCO JAMでも同じくトリを務める予定だった彼らは、一年分のみんなの気持ちを、一年分さらに深くなった優しさで、強さで、地元への思いで、そっと抱き締めてくれた。

温かな涙と少しの寂しさ、満ちる充足感に浸ったまま地上に続く階段を上る。moleを出ればいつも通りの狸小路がそこにあった。三日前と何ら変わらない風景なのに全く違う場所のように見えるのは、抱えきれないほどの思い出や情緒が浮き上がってきて、愛しくて堪らないから。私たちの街、札幌。そこに、道内各地から、全国から、強くて格好よくて面白くて優しくてときおり見える弱さもダメなところも全部まとめて愛するしかないような人間が集まり、魔法みたいにずっと輝いていた三日間。

魔法みたいだけど魔法じゃない、奇跡でもない。この夢のような時間の真ん中で、すべてを動かす原動力となっていたのは一人の男・くぼたしょーの志、ただそれだけである。出演者も、来場者も、スタッフも、全員、そのひとつの核に触れて、感じたことを感じたままに、各々のかたちとやり方で走り抜けた。

北海道にはこんなに美しいイベントがある。北海道には多様で刺激的な音楽がある。北海道には熱く愛おしい人がいる。地元の民も、道外の民も、まだまだ北海道を楽しめるはず。

さあ、愛し尽くそう。生き尽くそう。次回DOSANCO JAMは、2020年11月22日(日)。またmoleで出会う、その日まで。

文・AkM(@CHOEUPHORIA)

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